SONY TC-K8B

1977年発売のカセットデッキで当時のSONY最上級モデルです。2モーター、F&Fの2ヘッド、シングルキャプスタン、液晶ピークメーター。某オークションで中古ジャンクデッキとしては割と高めで落札しました。巻き戻し早送りはするが再生はしないとのこと。多分これはメカのメンテで直るでしょう。外観は経年の汚れがあるものの、ほとんど傷も無く極上の部類でした。ただ、液晶メーターの状態が気になるところです。

到着直後の状態。早速テープを入れてみるが確かに再生しない。2秒くらいで停止します。


メカ部分を取り出し、各パーツの古いグリスを拭き取ってシリコングリスやタミヤのラジコン用セラミックグリスを塗布。2ヘッドシングルキャプスタンなのでメカは割とシンプルで頑丈そうです。滅多に壊れそうにありません。
ヘッドを上下させる部分は、ボールベアリングと円筒状のベアリングが数個使用されているので無くさないように注意です。


大型のフライホイールも取り外してメンテ。ベルトは伸びていたので新品と交換。
これで再生不良は直りました。


再生状態にはなりますが、今度は片側の音が出ません。ラインアンプ部の調整用トリマーが劣化してました。反対側も触れるとポキッと折れてしまいましたので、両方交換して解決。30年ものだとこの辺の金属疲労は当たり前かな。あとはトランジスタ(2SC1345)は足が黒くなっていたので、予防処置的に2SC2240に交換し、電源部のコンデンサーも交換しました。これで、しばらくは大丈夫かな。


テープセレクターのガリが酷いので、取り外して掃除する。ベトベトのグリスをアルコールで拭き取り2000番の紙ヤスリで軽く磨き、接点復活剤を塗布。小さいコマのほうは、アルコールを染みこませた名刺にはさんで接点を洗浄。ほかに、録音再生基板についている長いスイッチも分解洗浄しました


メカ部と再生部のメンテは終了。
テープを入れて再生してみると、なかなかの音。しかし液晶メーターが・・・・?


これでも一番濃い角度から撮影したつもりですが、薄い! かなり薄いです。と言うか、ほとんど見えない。
このデッキは液晶メーターが命ですからこんなに薄いと価値も急降下。30年以上たった物ですから液晶の劣化もしょうがないですが、本体がきれいなだけにこのままじゃイヤなので、先のTC-K60でやったように偏光フィルムを張り替えようと思います。


液晶ユニットを取り外して分解しました。バックライトの蛍光灯が見えます。このモデルがSONYの液晶一号モデルで、構造が後発のTC-K88やTC-K60のものより複雑でデリケートです。当時最新技術のこのメーターの駆動回路はLSI・4つにまとめられていて、素子数は約5200個とのこと。メーター部以外の素子数の10倍にも達していたそうです。表示セグメントの数もこちらがかなり多く、左右各64個あります。薄い配線用のフィルムが今にも切れそうなので扱いは慎重に。


サイドの接着剤を慎重にはがして、白い目盛パネルを取り外しました。この透明なガラス部分にパターンと液晶が封入されています。偏光フィルムは目盛パネルに貼り付けてありました。


外側の偏光フィルムもゆっくり慎重に剥がします。強烈な酢のような臭いがしました。おそらく接着剤でしょうか。何かの臭いに似てると思ったら、自動車のウィンドフィルムを剥がした時とそっくりでした。


2枚の偏光フィルムの角度を調整して組み立てします。基本的に角度90度で最も濃くなります。本来はブルーの液晶ですが、普通の偏光フィルムを使用しましたので黒色です、でもかなり濃くなりました。しかし、液晶の経年劣化でしょうか、パターンにまで色がにじみ出て付いています。まあ、薄くて見えないよりはいいでしょう。いい状態のものを探して移植してもいいかな。




フロントパネルやツマミ類等を入念に洗浄して完成。フロントパネルだけはマジックリンを使うとインデックスが落ちる危険性があるので、マイペットを薄めて洗浄しました。
音は後発のメタル時代のデッキには負けますが、心地よい音です。70年代のロックを聴くと見事にマッチしました。ZEPやBOSTONなどを聴くと当時にタイムスリップしてしまいます。


この操作ボタンに憧れました。店頭掲示用の値札も取説と一緒に入ってました。


液晶も何とか復活。動きが俊敏です。


ガンメタのパネル、そして独特な操作ボタンと絶妙に配置されたアルミ削り出しのツマミ類。この時代のSONY製品はデザインがいいですね。


プランジャーを使用しているので動作音は大きいですが、逆に信頼感があります。
ここ最近SONY製品ばっかり集めています。この時代のSONYデザインにはなぜか惹かれる。
妥協しない造りととデザイン。そして、日本製の部品に日本組み立て。うーんやはりこの時代のSONY製品は残しておくべきでしょう。






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