SONY TC-R6
SONY最後のオープンリールテープレコーダー。某オークションで落札しました。76年発売で当時価格は\198,000。3モーター3ヘッド、デュアルキャプスタンの本格的なモデル。デザインが非常に優れていて、アルミ製のパネル、入力ボリュームはアルミ削り出しなどお金がかかっています。シンプルでかつ高級感があり、測定機のような面構え。質感のよい大型のレベルメータなど、このデッキのデザインは今でも十分通用すると思います。すでに35年は経っています。いろいろへたっていると思いますので、長く使うためにとことん整備をやろうと思いました。整備後の写真。丁寧に磨き上げたので35年の歳月を感じさせません。
まずは、キャプスタンブロックの整備。初代オーナーさんがヘビースモーカーだったらしく、すごいヤニでした。マジックリンで丁寧に汚れを落としたあとにグリスアップ。このブロックを取り外した状態でPLAYボタンを押したら後ろのアクチュエータの鉄心が外れました。最初、知らずに組み付けたので、うまく動作せずとても焦りました。
分解の仕方や、オープンリールテープレコーダーの整備情報はオープンリールデッキ保全第三課で丁寧に解説されています。このブログでいろいろと勉強になりました。また、質問にも丁寧に答えて頂けますので、本当にすばらしいブログです。
グリスはコーザイのシリコ?ングリ?スを使用。このグリス結構高いんですよねー。オイルはアメリカ製のテフロン配合オイルです。私はレコーダーの整備にこのオイルをよく使っています。グリスはブロックの可動部分に、オイルはキャプスタンプーリーのシャフトに薄くのばして塗布しました。幸い、キャプスタンベルトは交換されているらしく、良好な状態でした。
アルミのヘッドブロックのカバーはくすんで、さすがに35年の年月を感じさせます。茶色い部分はおそらくタバコのヤニです。
荒いサンドペーパーで磨いて、新品当時のヘアラインを再現。新品と微妙に違いますが、これで良しとしました。この磨きは結構疲れました。周辺はプラモデル用塗料ををブレンドし、メタルプライマーで下地処理をしてからエアブラシで塗装。このへんはプラモデル製作のテクが役に立っています。
キャプスタンブロックを取り外した状態。物が大きいので、作業場の確保が大変。
アンプ基板を見ると、再生レベル・録音レベル・VUメーターのトリマー類が交換されていました。さきのブログの改造編で紹介されていた再生EQ調整用のトリマーも追加しました。
液漏れなどはありませんでしたが、アンプ部の電解コンデンサーとトランジスターをほぼ全部交換。上の写真は交換したものです。最初はこれだけにとどめるつもりでしたが、ほかにタンタルコンデンサーも使われていたので、ついでにと、とうとうタンタルまで全部交換してしまいました。交換した電解コンはTOSHINのUTSJシリーズで安くて音がいいと評判です。
あと、コントロール基板の電源まわりの電解コンデンサーとダイオードも交換しました。
部品は全部通販による取り寄せで、交換作業で約3週間くらいかかりました。ふー疲れた。
部品交換後、テストテープとミリボルを使って再生レベルや再生イコライザの調整。そのあと、Quantegyの新品テープで録音レベルやバイアス・バイアストラップなどの調整をしました。ヘッドアジマスの調整はオシロスコープを持ってないので、PCでWave spectraというフリーソフトを使い調整。これらの調整は試行錯誤して結構時間かかりましたが、満足できるレベルになり、届いた時より大分音が良くなりました。
調整後試運転中。ヘッドはフェライト製なので摩耗は全くありませんでした。PCソフトで周波数特性を測定したら20kHzまでほぼフラットに再生出来ていました。
ブレーキ調整、ACインレットの改造、内部の掃除、ツマミ類の洗浄、化粧ネジの磨きなどを行って一応整備終了。整備を始めて1ヶ月半くらいかかりました。
このデッキ、いいですね。まさに質実剛健という言葉がぴったりです。メーカーがいい物を作ろうと本気になって設計した感じがします。あらゆるところに手抜きがありません。特にVUメーターがいいです。
発売当時、カタログ写真で赤い10号DUADテープと一緒に写っていたこのデッキ。当時私は中学生で、一生買えないだろうと思ってましたが、とうとう手にすることが出来ました。
CDを録音してみましたが、とてもいい音を聴かしてくれます。また、10号リールが回る姿は迫力があっていいです、やはり回りものには弱いですね。
このデッキは私が所有しているテープレコーダーたちの大親分になりました。
最後に、このデッキの整備はnekoneko_onsenさんのブログオープンリールデッキ保全第三課をかなり参考にさせて頂きました。ありがとうございました。
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