SONY TA-4650
1976年発売のSONYプリメインアンプ。SONYが開発した3極管(真空管)に似た動作をするV-FETという素子を採用したアンプで、当時はかなり話題になったようです。V-FETアンプは音がいいとか悪いとか諸説いろいろありますが、このTA-4650はその中でも好評価だったようです。オークションにもよく出品されますが、V-FETが死んでいるものもあるので、最低でも音が出るものを入札したほうがいいと思います。このV−FETは現在入手困難で、復刻で発売されましたが特性が若干違うということで代替え品として使えるか微妙なようです。今回は音が出るという出品の説明と、外観もそこそこきれいなものを落札できました。到着したばかりのTA-4650。恐る恐るスイッチを入れるとちゃんとプロテクト解除してくれました。この瞬間が一番緊張します。ヘッドホンをつなげてCDを再生。さらにスピーカーをつなぐと元気に鳴ってくれたのでひと安心。もし鳴らなかったらお手上げだったかも。
底にあるパンチングメタルを外すと、貴重なV-FETが見えます。2SK60と2SJ18が2ペアでシングルプッシュプルです。やっぱりこのキャンタイプの半導体っていいなー。見ているだけでワクワクします。
トランジスター類は今では手に入らないのがほとんどなのでそのままにしますが、足が黒くなっているものが多かったので歯ブラシでこすってきれいにしました。これ案外いけるそうです。35年前のアンプなので電解コンデンサーは全交換。ただし、むやみにオーディオ用のコンデンサーに交換すると全体の音のバランスがおかしくなるので、付いているものと同等品にしようと思います。
使われいるコンデンサーは日本ケミコンのSLシリーズ(85℃標準品)がほとんどでしたので、コンデンサーメーカー推奨代替品であることと、クセが無く、古いアンプの交換用コンデンサーとして良いと言われているごく普通の日本ケミコンの85℃標準品SMGシリーズにしました。このごく普通がいいようです。
メイン基板のカップリングコンデンサーだけは他のサイトで評判の良かったおなじみの東信工業のオーディオ用に交換。
もともとここにはオレンジ色の低漏れ電流タイプのコンデンサーが使われていました。
交換したコンデンサー。電源部の大きな平滑コンデンサ2個だけは換えていません。容量をアップするといいみたいなので後々交換しようと思います。
V-FETも放熱用グリースを塗り直し。
コード類は全てヒモで束ねられており、手作り感満点。古いアンプはこれがあるからすばらしい。職人芸です、これは簡単には切れません。
メンテナンスは非常にしやすい。フロントパネルは前に倒れ、基板は全てソケットで分解はあっという間です。ハケと掃除機を使って隅々まで掃除をしました。年代を考えるとかなり程度がいいもののようです。左上に見える白いものはネジをまとめておける100円ショップ製氷皿。とても便利です。
めんどくさいですがスライドスイッチの分解掃除。綿棒にマイクロコンパウンドを付けて磨き、歯ブラシで清掃後アルコールで拭き取る。最後にラジコン用接点グリスを少量塗布。そのほかにリレーの接点洗浄や、ボリュームに少量の接点復活剤。
ツマミ類もマジックリンで丁寧に洗いました。右のボリュームノブだけアルミ無垢です。抜け止めのためのガーゼのような布が軸にありました。細かいところまで気が配られています。
組み立てて、バイアスの調整。ネットで英文サービスマニュアルが拾えます。マニュアルだとテストポイントでの電圧は75mVですが、若干低めの70mVに調整しました、両チャンネルとも少し変動します。
スピーカーをつないで試聴。これが35年前のアンプとは信じられない。まさに3極管の音とでもいいましょうか。ちょっと線の細いというか淡泊というか。ゴリゴリ鳴らすタイプではありませんが、とてもきれいな音で鳴ってくれます。SONY製V-FETアンプの最廉価版ですがなかなかのものです。
このアンプは私が中学の時に父親が所有していました。当時私はこのアンプにまったく興味が無く、なんてダサイデザインのアンプなんだろうと思いながらよく鳴らしていました。「ボリュームのツマミの位置は普通真ん中でしょ、なんで右端にあるの?」と思ってました。そのアンプは結局故障して捨ててしまったようですが、35年後再び私が手に入れて鳴らしています。、今見るとこのデザインもなかなかいいですね。手元に残しておきたいアンプの一つです。
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